博士と彼女のセオリー

書いたのは奥様らしい。


◆制作
原題:The Theory of Everything 2015年 イギリス

◆キャスト
エディ・レッドメイン
フェリシティ・ジョーンズ
エミリー・ワトソン
デヴィッド・シューリス

◆あらすじ
1963年のイギリス。ケンブリッジ大学で物理学を学んでいたホーキング。後に妻となるジェーンと知り合い、未来は輝いていた。

ある日、ホーキングの体に異変がおきた。緊急搬送され下された診断は、余命2年。徐々に筋肉が衰えていきやせ細り、最後には自分の体をまったく動かせなくなると。

ホーキングはジェーンと連絡を取らなくなる。だが、ジェーンは周囲の反対を押し切り彼を支えると言う。結婚した二人は子供をもうけ、ホーキングは博士となり仕事は大成功する。それとは逆に体は日々動かなくなる。

子供の世話と夫の介護、疲れはじめたジェーンは母の勧めで聖歌隊へ。そこで知り合ったジョナサンという男性が、事情を聞き手伝うと申し出る。

ジョナサンとジェーンが惹かれ始めた頃、ホーキングが倒れる。器官を切開したホーキングは話せなくなり、意志の疎通の手段がまばたきだけになってしまう。その為、まばたきでの訓練が出来る介護士エレインがホーキングの訓練をはじめる。エレインとホーキングの仲が急接近。

とうとうホーキングとジェーンは別れを決め、ホーキングはエレインと、ジェーンはジョナサンのもとへ。

ホーキングの功績により、エリザベス女王に招かれた際にはホーキングとジェーンが出席。その時、ホーキングは子供たちを見て僕らの創造物だと。

***

いい映画だったと思う。とても感動的。何よりいいのは、想像の余地がすごくある事。つまり、どろどろに描いていない事。それは博士と妻がどろどろを好まない性質だったのかもしれない。

けれど口にしない語られない部分があるからこそこの映画は素敵なんだと思う。

個人的にちょっともやっとしたのは、ジョナサンが手伝っている時他の人から、男性が出入りしてるのはどうかと思うと言われた事。ほっといたれよと。ジェーンは介護と育児で疲れていただろうに、助けてもくれない外野が偉そうな態度で物申すのは、どうなのよ。

3人は最初とても楽しそうだった。けれどジェーンとジョナサンの距離が近くなっていた事は確か。いくら最初支えると言ったとしても、時間の経過と共に変わってしまってもおかしくない。それぐらい大変だと思う。

3人の関係が崩れるとしたら、その答えは彼らが出すだろうに。ジェーンはホーキングと共に生きる道を再び選んだのに今度はホーキングがエレインと急接近。

そんな時には、それはいかがなものかと言う人は出てこない。(苦笑)ジェーンは賢い女性みたいだから、自分のキャリアが閉ざされた事もジョナサンと一時期、離れた事も、ホーキングがエレインを選んだ時も、ホーキングが幸せならそれでいいと思っていたかもしれない。どの時点で心の整理がついたのかは、わからないけれど。それぐらい深い愛情の持ち主じゃなきゃ、支えられない気がする。

そして、そんなに愛されるホーキングはそれに見合うとても魅力的な人なんだと思う。ホーキングがエレインと急接近したのはジェーンの気持ちの変化に気付いてた事、無理やり気持ちを抑えこんで側にいられても重荷になるだけで、彼もまた辛かった時だったんだろう。ジェーンに愛情も感謝もあったからこそ、自分が悪者になる覚悟をしたのかも。

実際の自分の体は車いすの中なのに、想像は自分の足で歩いてボールペンを取り上げている、あのシーン。あれだけの病状の中、まだ前向きに幸せな想像が出来る精神力。周囲を笑わせる朗らかさと心遣い。頭の良さ、卑屈にならない前向きな強さ、生きる事を楽しむ朗らかさ。100分の1でも見習いたい。