ジャンヌ・ディエルマン,ブリュッセル1080,コメルス河畔通り23番地

 タイトル長すぎ。

ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地 [DVD] - シャンタル・アケルマン
ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地 [DVD] 



◆制作
原題:Jeanne Dielman, 23, quai du Commerce, 1080 Bruxelles 1975年 ベルギー、フランス

◆キャスト
ジャンヌ(デルフィーヌ・セリッグ)

◆あらすじ
ジャンヌはブリュッセルのアパートで、思春期の息子と2人きりで暮らしている。夫は亡くなっており、ジャンヌは気楽な今の暮らしを気に入っている。湯を沸かし、じゃがいもの皮をむき、買い物へ出かけ、洗濯をする。そんなジャンヌの日常が少しずつ狂っていく。 

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あれはなんていうドラマだったか、母親が太りすぎてしまって病院へ担ぎ込ま、毎日掃除してきりがなくて、ある日気が付いたら動けなくなった。その母親はそう言った。そのシーンを思い出した。

ジャンヌは流れるように家事をする。髪を整えスプレーをふり、一昔前のきちんとしたご婦人。その仕草が端折ることなく画面に映し出される。ジャガイモの皮をむき終わるまで、皿洗いが終わるまで、最初から最後まで画面に映し出される。

この女優さんがいいのか、わりと飽きずに見ていられる。あー、あるあると思う出来事に思い当たるのは私が女だからだろう。男性が見ると面白くはないかも。基本的に家事は見ていて楽しいものではないし。

そんなジャンヌが最後に客に鋏を突き立てる。それがなんというか腑に落ちるというのかな。きちんと家事をするジャンヌも、子供に対するジャンヌも、鋏を突き立てるジャンヌも、あージャンヌだと思えてしまう。恐ろしい人というのではなく、誰でも内にもってる恐ろしい部分が表にでてきただけという感じ。

客を嫌がってはいるけど、激しく抵抗してるわけではなく、鋏を振り下ろす顔に怒りはない。殺した後の彼女の表情を見てると、疲れたという表現の方が合う気がする。激しく抵抗したとして力で適わない事を彼女は知ってる。

嫌だった家から出る為に夫と結婚したので、夫が亡くなった後誰かと再婚するという選択肢はなかったのだろう。息子は思春期でどうでもいい事を話し、預かった赤ちゃんは泣きやまず、いつも座っていた落ち着く席には他の客が座っていて、客はなかなか帰らず、そういう自分ではどうしようもない事に疲れ果てた、そういう感じに見えた。