三浦しをん/白いへび眠る島

あれの正体とは  



◆制作
2005年 日本 角川文庫

◆あらすじ
悟史が久しぶりに帰省したのは、13年ぶりの大祭を控えた夏。大人たちは名前を言う事さえはばかられる「あれ」が出たと。持念兄弟と呼ばれる幼馴染の光市とともに、悟史は。

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主人公の悟史は、不思議なものを見やすい体質のせいか生まれた島に違和感を感じていた。だが、まだ18歳。将来島に残って生活するのかそれとも出ていくのか、漠然としていてはっきりとした意志はなく。

幼馴染の光市は逆に島にしっかり馴染んでいるように見える。持念兄弟の悟史と光市は違う性質をもち、それをお互いに羨み尊敬してる。そして誰より信頼してる。

大祭という大事な時期なのに、あれの噂。不穏な空気。島には昔ながらの風習があって、長男は島に残り次男は島を出るはずなのに、神社の離れには次男の荒太と犬丸という友人がいた。あれと荒太、犬丸は関係あるのか、それとも無関係なのか。最初はあれが何なのかが気になって読み始めたはずなのに、途中からは、島そのものが気になり始めた。

主人公の悟史。18歳であれこれ悩む年頃。物事をはっきりさせたい性格。それなのにわからない事が多くてもやもやしてる。持念兄弟がもつという石の不思議、悟史と光市の記憶、犬丸の存在。悟史に見えているのは現実なのか、幻想なのか。

親離れしはじめて、どっちを向いて生きていったらいいのか。子供には戻れない、大人と言うには頼りない、漠然とした不安とはっきりしない混沌の中、彼が道しるべとしたのは、幼い頃から共に育った光市の存在。この2人がこの不思議な話を、すんなり読ませてくれた気がする。