アン・クリーヴス/大鴉の啼く冬

景色や色、気温まで浮かんできて、好きなタイプの本。なのだけど、もうちょっと展開が早いといいな。



◆制作
原題:Raven black 2007年 イギリス 創元推理文庫

◆あらすじ
新年を四日前に迎えたばかりのシェットランド島、一面の雪景色の中に真っ赤なマフラーを首に巻かれた、少女の遺体。小さな町で誰が彼女を殺したのか、8年前の未解決の少女失踪事件との関連はあるのか。

***

島の中の閉塞感。誰もが顔見知り。くしゃみをした事も、周りに知られてしまうような、よく言えば家族ぐるみで隠し事も出来ず、悪く言えば、プライバシーがあまりない小さな町。

真っ黒な髪と真っ赤なマフラーの少女が、物事を斜に構えてみる癖があったのは無理もない気がする。母の死、それによって抜け殻のようになった父との暮らし。もう少し年齢がいけばまた違ったのかもしれないけれど。

自分の事は自分でするしかない。何かで判断に困っても、自分で答えを出すしかない。同じ年頃の子供より、少し早く大人になってしまったとしても不思議はない。

犯人は、すぐにわかった。残念ながら。人は自分の居場所がないと辛い。居場所、救いといってもいいのかもしれない。好きな事に没頭してる間は嫌な事を忘れるとか、世界一じゃなくても悪くないと自分で思えるものとか。犯人にはそれがない。

だから、どんな手を使ってでも自分を救おうとする。とても切なくて悲しい。犯人は弱くはないのに、自分を弱いと思い込んだ気がする。読んでいる間、耳の奥でゴーゴーと風の音がしてた。とても寒くて、淋しい風の音。夏に読んだのは正解だったかも。