パトリシア・カーロン/ささやく壁

話せない動けないけど意識はあるっていうのは辛いな。

ささやく壁 (扶桑社ミステリー) - パトリシア カーロン, Carlon,Patricia, 和子, 富永
ささやく壁 (扶桑社ミステリー) - パトリシア カーロン

◆制作
原題: The Whispering Wall  1999年 オーストラリア 扶桑社

◆あらすじ
当然の発作で全身が麻痺した老婦人サラ。体を動かす事は出来なくても、見たり聞いたり情報は入ってくる。考える事も出来る。時間だけはたっぷりある。

そんなある日、殺人の相談をしている会話を聞いてしまう。

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1人ではできないのが会話。自分以外の人の思考は面白い。サラが話し声に耳をすます気持ちが、わかる気がする。参加は出来なくても、聞くことが思考を刺激してくれる。ただ、必要な情報を得られるとは限らない。質問する事も、見たい方に体を向けてくれと訴える事も出来ないもどかしさ。かゆい所に手が届かないよりイライラしそう。

そんな和やかな、何の変哲もない日常が一変する。殺人の相談をする会話を聞いてしまったばかりに。

自分ならどうするだろう?諦めて、どうせ私は役立たずさとふてくされる?がんばって伝えて、自分が危険にさらされる?生きていたいので、人が殺されても、しらんぷりする?こんな選択はしたくない。どっちに転んでも楽しくない。

でも、生きてるとここまでではなくても、難しい選択をしなきゃならない時がある。サラみたいに賢くも上手にもいかないだろうけど、考えて工夫して、納得が出来るように動けたらいいなとは思う。

限られた環境の中で、どう上手く動けるか。自分を納得させられるか。そういう物語を書くのがカーロンは上手いなと思う。