角田光代/真昼の花

本にはまりだした頃を思い出した。

真昼の花(新潮文庫) - 角田光代
真昼の花 - 角田光代

◆制作
2004年 日本 新潮文庫
◆あらすじ
真昼の花と、地上八階の海の2遍。

「真昼の花」
家を出て海外に行った兄の後を追うようにして、アジアに渡った若い女性。食費も削って安宿に泊まって売れるものを売り、とうとう日本企業の前で物乞いを。それでも帰りたくない。

「地上八階の海」
最近別れた男からの手紙が毎日のように届き、留守番電話に無言の着信。兄はすでに家庭を持ち、妻と子供がいる。兄の近くに引っ越した母。彼女が男と別れた理由とは。

***

真昼の花は、読み始めてすぐにアジアの匂いがし始める。観光客が近づかないだろう、ごみごみとしていろんなものが混ざった匂い。

そんな中で、彼女は自問自答する。先に勧めず後に戻る気にもなれず。そんなものだと白けもせず、誰かが考えそうな答えに安易に飛びつきもせず。

無駄に時間が流れながら、ジタバタしてる感じ。この感じが好き。

地上八階の海。うまいなと思う。何気ない時に、ふっとそういう事かと思い当たる事ってある。

彼女が男性と別れた理由。表面的に言えば、彼が言った一言。何故、あの一言が別れの理由になったのか。本人さえわかってなかったんだろう。

それが、ある日ふっとわかってしまう。男性からの手紙に描写される彼女は、実際の彼女とは違う。男が、彼女を見てるわけじゃない事を肌で感じていたんだろう。だから、彼女は男と真剣に向き合わなかった。

もし男が実際の彼女を見ていたのなら、あの2人の関係は変わっていたはずだもの。

ところが男はそんな事に気付かずに、当然のように妻、恋人の役割をふってきた。それがあの一言だったんだろう。彼女にすれば、2人の温度差がはっきりした瞬間だったんだろうな。