ウィリアム・J・コフリン/逆転敗訴

この遺言に関わった事で、検認弁護士ジェイクの人生は180度変わる事になる。遺言のみならず、ジェイクの人生も逆転。その逆転振りが痛快。

逆転敗訴 上 (講談社文庫 こ 42-1) - ウイリアム コフリン, 中山 善之 逆転敗訴 下 (講談社文庫 こ 42-2) - ウイリアム コフリン, 中山 善之
逆転敗訴 下  - ウイリアム コフリン


◆制作
原題: In the Presence of Enemies 1996年 アメリカ 講談社

◆あらすじ
若く美しい4番目の妻に銀行の支配権を委ねる、という遺言を残して銀行家が死んだ。

大手法律事務所に勤める検認弁護士のジェイクは、その遺言執行チームの一員に選ばれるが、故人の息子が遺言無効をを申し立てる。

発作の後に書きかえられた遺言の有効性を巡って審理が始まる。

***

銀行家には息子と娘がいる。それまでに3人の妻がいた銀行家。だが、4番目の妻は違っていた。銀行家の教えを吸収する良き弟子であり、心の友であり彼にとってはかけがえのない妻。そんな妻に、銀行家は銀行の支配権を委ねて亡くなった。

その遺言は、4番目の妻以外には都合の悪いものだった。支配権を狙っていた銀行内部の人間。父の遺言を当てにしていた、娘と息子。そんな遺言検認を、大手法律事務所はジェイクに。

銀行や実の息子を相手に、美人の妻では勝ち目がないと思われる検認。これに勝てなければ、ジェイクは事務所にはいられない。が、ジェイクには法廷の経験がない。法律事務所内部の力関係が、背後にあった。


争点は、発作の後に書き換えられた遺言。その時、銀行家は自分で判断できる能力があったかどうか。相手側は負けなしのやり手弁護士。銀行内部の人間、息子と娘の画策、報道関係者を巻き込んで法廷の幕があく。

法廷経験のないジェイクだが後がない。そんなジェイクが、4番目の聡明で美しい妻の思いに感化され慣れない法廷に出る決意をする。その法廷戦術の手本にしたのは、相手側のやり手弁護士の書いた著書。相手側の老練な弁護士は、ジェイクに経験がないのを知っている。

が、やり手なだけに、相手が経験がなくても、手は抜かない。法廷が終わった後、2人の弁護士がかわす会話がおかしい。精一杯戦ったジェイクを、認め褒め称え、どこで習ったんだ?と聞く相手側の弁護士。それに、ジェイクは、あなたの著書をお手本にさせて貰ったと
正直に告白する。

やられたと笑う相手側の弁護士。ここでも師弟関係が。そして、ジェイクは1つの決心をする。やり遂げたからこそ出来た決意。読後感は爽やか。