エリカ・スピンドラー/戦慄

 内なる恐怖と外からくる恐怖。どちらが怖いのだろうか。



◆制作
原題:Bone Cold 2002年 アメリカ MIRA文庫

◆あらすじ
最初に襲ってきたのは、目がくらむほどの熱い痛みだった。骨が切断されるおぞましい音がして、白い流しが赤く染まった。

幼いころの血塗られた記憶に苛まれながら、アンナは素性を隠して作家の道を歩みはじめていた。しかし、ある少女からのファンレターをきっかけに、穏やかだった日常はにわかに蝕まれていく。無邪気な手紙は、本当の恐怖の始まりだった。

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エリカ・スピンドラー2作目。

アンナの物語と言ってもいいと思う。何不自由なく暮らしていた幼い頃のアンナ。そんなアンナが弟のような友達と共に誘拐される。アンナは、指の一部を切断されながら助かる。

が、その後のアンナの人生は一変した。友を失った悲しみ、助けられなかった罪悪感。繰り返される悪夢、人間不信、影響は大きすぎた。

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名前を変え別の町で生活するアンナに、ある日届いた小包。それは母親(女優)のインタビューを収録したもの。身を潜めるようにして暮らしてきたアンナの日常を一変させる内容だった。

前後して、作家として生活しているアンナにファンレターが。ミニーと言う少女からのファンレターに、アンナは返事を書く。が、そのファンレターの内容がだんだん穏やかならぬものに。

その頃、赤毛(アンナも赤毛)の女性ばかりを狙う殺人事件が多発。アンナを取り巻く人達、アンナの両親、同じアパートに住む人達ボランティアを通じて知り合った少女ジェイ、精神科医のベン、アルツハイマーを患っているベンの母親。彼女のファンだと言うミニー、ミニーが恐れているあの人。

事件を担当する刑事とその相棒。その相棒の妻を巻き込み事件が絡み合い、進行していく。

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人は過去から逃げられない。それは自分自身の一部だから。いつかは立ち向かわなければならない日がくる。恐怖は自分の中にあるもの。それを一貫して書いてるのは違和感がなくてよかったな。

恐怖とどう向き合うか。大事な人が増えればそれだけ弱みになることもあるけれど、大事な人を守る気持ちが人を強くするあたりは、読んでていいなと思った。

幼い少女が、大事な人を必死に守ろうとするシーンは、勇気の原動力に腕力や年齢は関係なくて、思いやりなのが伝わってくる。その希望がないと、単なる恐怖の物語になってしまう。

最期の数ページで明かされる物語が切ない。誰かが辛い目に合っても、それが過去の事ならば何も出来る事がないだけに無力さを感じる。

その無力さを補う為に、毎日を懸命に生きるしかないのだなと思わせる最期。アンナの恋物語もその一部で気に入ってる。