京極夏彦/姑獲鳥の夏

 これがはじまりだったな。



◆制作
1998年 日本 講談社

◆あらすじ
昭和27年夏、東京。古本屋の主人にして神社の神主である京極堂こと中善寺秋彦は、友人の小説家・関口からある噂について相談を受ける。

雑司が谷の産婦人科・久遠寺医院の娘・梗子が妊娠20ヶ月を過ぎても一向に出産する気配がなく床についたまま、さらにその夫・牧朗が1年半前から行方不明だと言うのだ。

20ヶ月も妊娠したままなんて事が、本当にあるのか。文士・関口や探偵・榎木津らの推理を超え噂は意外な結末へ。

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幽霊とか妖怪とか、すごく書かれていてわくわくした。
眩暈というかゆらゆらした不確かな感じ、現実なのか夢なのか、読んでる間そういう感覚がしたのは楽しかった。
 
京極堂と関口がそばを食べるシーンで、値段を書いてくれたら嬉しかったな。そしたら、その後の菊乃(だったかな)の100万円が、あの時代どれだけの大金だったかが、そばの値段との対比でわかった気がする。そうすれば、もっと菊乃の必死さが伝わった気がする。
時代が今じゃない設定なので、今の100万円より大金なはずとは思うんだけど。

夏という季節、感覚がおかしくなる坂。頭の中にある思いと現実との差。人は自分の都合のいい方へ、物事を解釈しようとする。その結果、おかしなことが起こったように見える。
人の可笑しさとその愚かさゆえの可愛さが面白かったな。

「この世には不思議なことなど何もないのだよ」という京極堂の決め台詞も、探偵役が古本屋にして陰陽師が憑物を落とし事件を解決するという設定もよかった。

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先に映画を観てしまったので、本がなかなか読み進めなかったな。やっぱり先に本の方が楽。配役もよかった気がする。本を読んでしまうと頭の中でキャラが出来てしまうので、実際の役者さんだと違和感が出たりするけど、今回は少なかった。

京極堂役の堤真一さん、文士の関口役の永瀬正敏さん、榎木津役の阿部寛さん。榎木津って本の中ではかなりの美青年で髪の色とかは阿部さんとは違うけど、飄々としたキャラは出てたと思う。不満なのは木場役の宮迫博之さん、木場は荒っぽく男っぽいがわりと純粋な心の持ち主で内面と外面のギャップがあるタイプだと思うのだけど、そういう感じはなかったな。

定番のキャラ意外だと、いしだあゆみさんがよかった。

姑獲鳥の夏 プレミアム・エディション [DVD] - 堤真一, 永瀬正敏, 阿部寛, 宮迫博之, 原田知世, 田中麗奈, 清水美砂, 実相寺昭雄
姑獲鳥の夏 プレミアム・エディション