コーディ・マクファディン/傷跡(きずあと)

こういうのもありっちゃありなんだろうな。



◆制作
原題:Shadow Man 2006年 アメリカ ヴィレッジブックス

◆あらすじ
凶悪犯に夫と幼い娘をなぶり殺され、自らも顔と心をずたずたにされた辣腕FBI捜査官のスモーキー。心の傷が癒えぬまま休職中の彼女に、ある日部下から連絡が入った。親友が惨殺され、現場にはボニーという少女と、犯人からスモーキーあての挑戦状が残されていたという。

自分と同じような凄惨な体験をして傷ついているボニーを引き取ることによって心の問題に折り合いをつけたスモーキーは職務に復帰、優秀な部下と共に必死の捜査を始める。だが、犯人はスモーキーの大事な人達を標的にしてきた。

スモーキーとそのチームは犯人像を絞り込みはじめるが、次々と起こる凄惨な事件に、スモーキーは犯人を挑発し罠にかけることにする。ここで逃したら、今度はきっと大事な人たちそのものが毒牙にかかってしまう。やるかやられるか、スモーキーの作戦と犯人の正体とは。

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犯人が出だしでわかった。登場人物が捜査に関わる人とその家族、それ以外で分かれてて
犯人になりそうな職業と性格。わかりやすい。その分キャラははっきりしてて読みやすい。

「羊たちの沈黙」をしのぐといわれるだけのスリラーはいくらでもあるが、シャードーマン(原作名)は、まちがいなく凌駕していると書評されたと書かれていた。

凌駕してるかどうかはわからないが、トマス・ハリスが書くものはただの恐怖じゃなく、そうなってしまった悲しみが描かれてると思う。ハンニバルは好きでああなったわけじゃないと。

それに対してこの本はそうじゃない。サイコは生まれながらの悪。怪物として描かれてる。(そうなった経緯は書かれてるけど)トマス・ハリスのように、悪い事をしていても、人として描いてくれる方が、私は好みだな。

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主人公の心のうちが手にとるようには書かれているので、感情移入はしやすかった。1度失った自信や傷ついた心を癒そうと必死になる所や、外見(傷痕)に対するコンプレックスを克服していく過程、恐怖にどうやって対処するか、その必死は好き。

同じ事に遭遇しても反応の違い、対処の違いがキャラをより分かりやすくさせてて、読んでて微笑ましかった。

恐怖シーンはぞっとした。目の前が血で赤く染まり、暗闇の中で何かが蠢き、内蔵と骨が砕け、人の心の気持ち悪い部分が目の前に。精神状態が良くないと読む気にはならない。ただ
展開は早くて間延びせずに読めた。