スティーヴ・マルティニ/ザ・リスト

 大金と恋と危険。マルティニが仕掛けたトリック。



◆制作
原題: The List  1998年 アメリカ 集英社

◆あらすじ
驚異の大型新人作家の登場に出版界は色めきたつ。だが、すべては女性弁護士アビーの華麗な演出だった。自分の名前では売れないと思ったアビーは男性名での出版を試みた。だが、思わぬ事件が次々と起こる。ベストセラーの仕掛人との虚々実々の駆引きを繰りひろげながら、しだいにアビーは自分の作戦の落とし穴に落ちてゆく。

殺人犯の魔手を逃れ、執筆活動に専念するため、アビーはカリブ海に飛んだ。だが危険はどこまでも追ってくる。彼女の仕掛けたベストセラー作戦は、果たして成功するのか。ハンサムな替玉作家の秘密とは。

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イメージってのは大きいなと思っていたけれど、それに手をつけたあたりマルティニ好きだな。

女性弁護士アビーは華麗な演出を考える。売れないなら、売ってやろうホトトギスといった感じか。だが、アビーは1つ誤算をしてた気がする。最初はたしかに彼女が考え出した事だけど、仕事になってしまえばいろんな人の思惑や考えが入ってくる。仕事は一人じゃ出来ない。彼女はそれさえもコントロールできると思っていたのか。それとも、売れてしまえば言い分が通ると思っていたのか。

そんな時、次々と事件が起こり手に負えなくなってくる。お金それも大金がからんでる限り、事件が起こりかねないけれど、現実にはそう考える人は少ないだろう。そうそう身の回りで事件が起こっていない限りはそんな想像はしないだろう。だが手に負えなくなってきた時の、アビーの恐怖感や焦りが落ち着かない気分にさせる。

作家が作家のストーリーを書くという発想は新鮮だった。物語の中の作家とマルティニの考え方を同じだと思う人は多い気がするけど、アビーとマルティニでは違いすぎる気がする。あの考え方では、他の本は書けないんじゃないだろうか。アビーとマルティニを重ねてみてしまうと、マルティニにしてやられる気がする。自分がどう思われるかなんて事より、それを利用する方がマルティニらしい気がする。

イメージがどれだけ人に影響を与えるか、現実だと思ってるものとイメージを混同してたら、アビーのようになってしまう気がした。マルティニが書きたかったのは、それなのかな。それは誰にでも起こりえることで、それはちょっと危険な事のように思える。

恋愛もからんで面白く読めた。ただ恋愛が、ちょっと少女趣味っぽかった気もするけれど、そういうのもたまにはいいかも。