ロバート・グレイスミス/ソディアック

 映画を先に見て本を読んだ。



◆制作
原題:Zodiac 2007年 アメリカ ヴィレッジブックス

◆あらすじ
60年代後半、全米を恐怖におとしいれた連続殺人鬼、ゾディアック。占星術と暗号を使った犯行声明を新聞社に送り、マスコミと警察をあざ笑うかのように、残酷な手口で犯行を重ねるが、捕まらず。

殺害方法の残忍さといまだ解決されていないこの事件にとり憑かれ、執念の追跡によって集められた数々の証言と証拠品によって明かされる、ノンフィクション。

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映画を先に見てしまうと本を読む気が無くなる。それなのにこの本を読んだのは映画がいまいちピンとこなかったから。

監督も俳優さんもいいのに何故映画がピンとこないんだろうと不思議だった。
監督さんはゾディアックよりも解決に執念を燃やしたこの本の著者、ロバートさんを描きたかったのかも。ロバートさんのはまり方すごいもん。

でもロバートさんは、自分の事よりこの事件の解決を願ってた気がする。そーいう意味では、映画も事件そのものに焦点を絞ってもよかった気がする。それがわかっただけでも本を読んでよかった。

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ゾディアックが有名になったのは無理もないな。あの暗号。簡単に解ける暗号じゃないのも読めばわかる。でも、最初の暗号を解いた人がいて、もっと難しい暗号を送ってきたゾディアック。誰も解けなかった。

数年後、暗号を解いたロバート。使っていた本も探し当てた。その本には暗号に使われた全ての記号があった。犯行時期に関する推理も書かれてる。そして犯行。あの時期、あの付近に住んでたら耐えられない気がする。

犯行の準備、犯行そのもの、その後の手紙、どれをとってもゾディアックは楽しかったんだろーな。他の人間は彼にとって人ではなく獲物でしかない。彼がそう言っている以上、獲物相手に罪悪感も道徳観もないだろう。

1度覚えてしまった、標的を狙うという快楽は忘れないと思う。楽しいのに、何故やめなきゃいけないんだ?楽しけりゃいいじゃないか。それがすごく怖い。

ゾディアックは、かなり知能が高い。腕力も行動力もある。本人は自分に満足してる事だろう。ある意味有名人でもある。それを見る限り、人が幸せだと思うのは、自分が納得できるかどうかにかかってるんだなと思う。他人がどう見てるかではなく。

ああいう人に立ち向かう、すごい人々がたくさん出てくる。
ただ一番共感したのは、アームストロング刑事。途中で事件を降りた刑事さん。こんな事は見たくない。こんな事には関わりたくない。立ち向かえる人はすごいと思うけど、出来るなら関わりあいたくないアームストロング刑事さんの気持ちが痛い。

頭がよくて体も強くて心も強い人は、いい事しか出来ない仕様になってたらいいのに。