スティーヴン・ホワイト/償いの血

 女同士のセクハラ事件の関係者が次々に被害者に。

償いの血 (ハヤカワ文庫NV) - スティーヴン ホワイト, White,Stephen, 静子, 堀内
償いの血  - スティーヴン ホワイト

◆制作
原題:Higher Authority 1996年 ‎アメリカ  早川書房

◆あらすじ
テレサは、以前の上司ブライスをセクハラで訴えようとしていた。ブライスは、連邦最高裁判事ホーナーの首席調査官になっている。裁判になれば、高い地位についていて、大きな組織の後ろ盾もあるホーナーまでも相手にしなければならない。

だが、ブライスは何者かに殺害され、訴訟準備の調査をしていた私立探偵も殺されてしまう。

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女性同士でのセクハラ訴訟。裁判になったら注目を集めるのは目に見えてる。訴えられたプライスは、連邦最高裁判事の首席調査官。セクハラ裁判って立証が難しそうだし、相手が首席調査官とあっては信用度は抜群。

テレサは苦戦しそうだなと思った矢先、プライスが何者かに殺害される。悪い事に、訴訟準備の為に調査をしていた私立探偵までも殺されてしまう。

セクハラだけではなさそう。調査している間に違うものを見つけてしまい、それが動機かなと最初は思ったけど、それならプライスの殺害が当てはまらない。プライスが前から女性に対してセクハラをやっていて、それが動機なら何故今頃と思うし辻褄があわない。

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モルモン教の整地、ユタ。宗教が仕事や友人関係、生活に影響する土地。それが話を複雑にしていく。教会を汚したか、教えをないがしろにした時には、その罪人の血が流される。その血が、台地と混ざり合った場合だけ罪が許されると言われる血の贖い。その血の贖いという罰と同じやり方で、プライスも私立探偵も殺害されていた。何の罪なのか。その罪をプライスはおかしたのか。

宗教に詳しくないのでつい作家の思惑にひっかかりそうになるのだけど、よく考えたら宗教がどうであれ国がどうであれ人は人。犯罪を犯すほどの動機は、そう多くはない気がする。
それを見破らせなかったスティーブンに、気持ちよくやられた。こういうのは嬉しい。

プライスが引き金になったその背景に、知られたくない秘密が潜んでいて、それは消しようもない事実。その公に出来ない事実を受け入れて生きる人と、受け入れられずに生きる人。
どっちが幸せなのかは一目瞭然。じわーんとしみるような一冊だった。