フィリップ・マーゴリン/葬儀屋の未亡人

 陥れられる過程が辛くて、なかなか読みすすめられず。ただ、読後感はすっきり。しっかり世界に引きこまれた。

葬儀屋の未亡人 (ハヤカワ文庫 NV マ 16-6) - フィリップ マーゴリン, 加賀山 卓朗
葬儀屋の未亡人  - フィリップ マーゴリン

◆制作
原題:The Undertaker's Widow 2002年 アメリカ 早川書房

◆あらすじ
葬儀屋のラマーは、何度も結婚と離婚を繰り返している。若い女性が好みだったのだろう。
妻がある程度の年齢になると、新しい恋に走る傾向があった。
それでも女性の困らないあたり、ラマーは魅力的なのだろう。

そんなラマーが強盗に殺され、その強盗を妻が撃ち殺した。
単純な事件だと思われていたのだが、だんだんあやしくなってく。

*** 

ラマーの息子ジュニアは父親と口論してる事がわかり、妻のエレンは上院議員で
忙しく選挙で飛び回ってる間に、新しい恋のライバルが出現。
選挙の対抗馬にとっては、エレンのスキャンダルは格好のネタになる。

この事件を担当する事になった判事クィンは、妻と上手くいってなく、関係修復の為に
仕事の傍ら休暇をとる。それが悪夢のはじまりとはしらずに。

人には言えない秘密は誰にも相談できない。恐喝、命の危険。
その辛さが伝わってきて、読むのが辛かった。

***

最初から仕組まれた陰謀。クィンが誰かに相談すれば、秘密は秘密ではなくなる。
単純な事だけど、その単純な行動を起こすには仕事や家庭やそれまで築いてきた
全てのものを失う覚悟が必要になる。

すべてを失っても残るものもあるだろう。人との絆とか経験とか。
でも、それはやってみなきゃわからない。特に人の絆は。
誰に相談するのか誰を信用していいのか。そこが難しい。

話は後半にいくほど、二転三転して面白かった。
辛くてページをめくるのが辛くなるってことは、いい作家だって事なんだろうな。
それだけ本の世界に引き込まれ、登場人物の気持ちに感情が揺さぶられたという事だし。
気持ちよくしてやられたな。