B・M・ギル/悪い種子が芽生える時

邦題がぴったり?

悪い種子が芽ばえる時 (扶桑社ミステリー) - B.M. ギル, 美耶子, 吉野
悪い種子が芽ばえる時 - B.M. ギル


◆制作
原題: Nursery Crimes 1990年 イギリス 扶桑社

◆あらすじ
ザニーは6歳のとき、4歳の坊やウィリーを池に沈めて殺した。大好きな猿のお人形をとりあげられたから。つづいてパン屋のおじさんを焼殺した。おじさんがよそ者の子に親切にしたから。

いったい、あどけない彼女が殺人者などとだれが思っただろう。両親はザニーを修道院の寄宿学校に入れたが、優雅で上品な美少女に成長したザニーは、またしても事件を起こした。めざす男性を手に入れるために。

***

最初から犯人が提示されてるので謎解きではないけれど、ザニーが成長した時に興味をもってしまう。

6歳で4歳の子供を殺してしまうザニー。ザニーは特別な子なのか、生まれ落ちた時から悪の運命を背負った子なのか。そういう子もいるのかもしれないけど、ザニーがそうだとは思わない。子供って純真無垢。無垢というのはわりと薄情で残酷な一面を持ってる。

そんな無垢な子供は、あらゆるものを吸収して育つ。ザニーも同じ。彼女は学んでしまう。人を殺しても周囲はそんなに大騒ぎしないものだと。

悪い事をしたらその場で叱って諭さないと忘れてしまう。後からだと覚えてない。覚えてない事を叱られたって何の事だかわからない。何の事だかわかんないけど、怒ってるみたいだからあやまっておこう。そういう事になってしまいかねないんだろうな。

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この話を面白く読ませたもう1つの要素が、願望。ザニーは殺人を何度も告白してる。だが、周囲は信じない。まさかこんな子供が、まさかこんな可愛い少女がそんなひどい事出来るわけない。事実が目の前にあっても、人は見たいものしか見ない。

ある日、突然、目の前の真実に気がつく事ってある。そういう盲目の願望が、ブラックユーモアになってる。