トマス・H・クック/神の街の殺人

 モルモン教をあまり知らなかったから新鮮だった。ユタ・ジャズが出てきてにんまりした。

神の街の殺人 (文春文庫) - トマス・H. クック, Cook,Thomas H., 潔, 村松
神の街の殺人  - トマス・H. クック

◆制作
原題:Tabernacle 2002年 アメリカ 文藝春秋 

◆あらすじ
ソルトレーク・シティでしか起こらない、モルモン教の街で次々起こる殺人事件。犯人は教会に恨みをもつ者らしい。やがて、百年前の忌まわしい教会の過去が暴かれる。

***

女性はむやみに肌を出さず、きちんとした戒律を守って生活するモルモン教徒。そんな宗教の発祥の地。人間関係は、宗教の繋がりから広がるみたいだ。同じような服を着て、妻は妻の夫は夫の務めを果たさなきゃならない。ちょっと窮屈に感じるのは、私が気ままだからかな。

そんな街では殺人などありえない、はずなのだが現実には起きてしまう。それもこの街にあってはならない黒人娼婦が被害者。人間の表と裏が存在してしまう。ところが事件はそれだけで終わらない。教会幹部が狙われる。

事件を捜査するのがニューヨークから来た刑事トムだというのが、この話を面白くしてる気がする。彼はこの町では部外者。モルモン教を知らない読者と同じ立場なので、彼を通して話をわかりやすくなる。

トムはニューヨークの荒廃ぶりに嫌気がさしてた。平和な町に赴任したとき、少し胸を撫で下ろした。だがこの町もニューヨークも代わり映えせず、疲れた心をひきずりながら事件を追う事になる。

おまけにこの町に根付く宗教。彼には馴染みがなく、事件を解くには宗教の背景から理解しなきゃならない。余計にお手間がかかってる。思うようにはいかない。またかよーって心の声が聞こえてきそうな気がする。

宗教の事はあまり興味がないけれど、服装や宗教や職業に対する思い込み、人間の性が面白かった。思い込んでる事って以外に多いんだろうな。