サラ・デュナント/フィレンツェに消えた女

 わからないというきつさ。

フィレンツェに消えた女 (講談社文庫 て 9-5) - サラ デュナント, Dunant,Sarah, 敦子, 小西
フィレンツェに消えた女 (講談社文庫 て 9-5) - サラ デュナント

◆制作
原題:Mapping the Edge 2003年 イギリス 講談社

◆あらすじ
ロンドン在住の敏腕ジャーナリスト、アンナは、六歳の娘リリーを持つ未婚の母。締め切りと育児に追われる生活に倦怠を感じた彼女は、仕事と称してイタリアに旅立つ。ところが予定を過ぎても彼女は帰宅しない。家出か、誘拐か、それとも。

留守を預かる親友のエステラは、警察に捜索を依頼する。

***

物語の核になる、アンナ39歳。女性。
昔は敏腕ジャーナリストだったが、未婚の母を決意して子育ての為に一線を退いて数年たつ。大なり小なりこういう岐路はあるだろうな。男性より女性の方が多い気がする。

本気で仕事をすればするほど、2足のわらじは大変になる。仕事は経済的な豊かさと充実感を満たしてくれるかもしれないけど、それを脇においてもいいと思えるものがあるのは、それはそれで幸せだったりする。アンナも子供が小さい間は、そうだった。

でも、いつまでも子供は幼いわけじゃない。同じところに人はいられない。子育てが一段落してきて、先を考えるようになったアンナ。周りを見渡せば、ソウルフレンドは仕事と恋愛に、充実してるように見える。娘の父代わりをしてくれてる男性も、仕事は順調。新しい相手はかなりいい感じの人。娘が大人になって自分の下を去ったら、自分には何が残るんだろう。アンナがそう考え始めるのは、自然なことだと思える。

そんな心境で旅をするアンナに起こる事。それはロマンチックな出会いか、それとも危険なアバンチュールか。ここからが本当は一番面白いとこだけど、ネタがばれるので書けない。

家で待つ娘リリーの感受性豊かな性格。母の身を案じつつ、どこか強くどこかはかなく。そのリリーとアンナの帰りを待つ友人達がまた辛い。子供にどう言い聞かせる。何故、帰らないのか、何故連絡がないのか。トラブルか、事故か、失踪か。わからないっていうのは、結構きついもんだな。

すごく危うい綱渡りを読んでる感じがあった。でも、その息を潜めてる感じが好き。