少年というかこの人格に恋してしまったと言った方がいいのかな、やられた、そんな感じ。
◆制作
原題:The Price of an Orphan 2000年 オーストラリア 扶桑社
◆あらすじ
父親が服役中のため里子に出された9歳の少年ジョニーは、田舎に退屈し禁じられた洞窟探検を楽しんでいた。養い親はまだ自分達の子供を持った事がなく、罪のない嘘をついては周囲をからかうジョニーに手をやいていた。
そんな矢先、ジョニーは女性が殺される所を見てしまう。けれど、誰もジョニーの話を信じてくれない。愛想をつかした里親は、ついにジョニーを送り返す決意をするが、少年の最後の慰みにとキャンプ旅行を計画する。
だが、殺人犯からすれば、事件を目撃した少年を始末する絶好の機会でもあった。少年と犯人の知恵比べは、どちらに軍配があがるのか。
***
父親が服役中、見知らぬ土地、見知らぬ親代わり、その里親は、自分の価値観を押し付けてくる。馬に乗れないのは、男らしくないとかいうが、ジョニーは馬より自転車が好き。
まだ9歳。父親が恋しい。さびしい。そんな思いもしているけれど、表には出さない。
口にしても、現実は変わらないと思う少年。
そんなジョニーが見てしまった殺し。最初は怖くて里親に話すけど、聞いてはくれない。
いつもの嘘だと思われる。そうじゃない、本当に見たんだと言いかけて考える。
田舎町で自分が見たと話の種にされてしまったら、すぐに犯人に知られてしまう。そんなによそ者が来る土地じゃない。犯人は近くにいる。そう考えてぞっとする。慎重に行動しなきゃ、目撃者は消されるんだと彼は思う。
けれど、少年は犯人につかまってしまう。証拠のありかを吐けとつつかれる。少年の行動で、他の人の命まで危険になる。そういう状況に耐えて、軽口が叩けるジョニーが素敵だ。
根っから負ける気がなくて軽薄で、頭の回転がよく、芯は優しい。すっかりべた惚れ。
こんな子なら、一緒に暮らしてみたいと思ったけれど、やりあったら疲れそうだな。
パトリシア・カーロン/沈黙の代償
カーロン、3作目。前に読んだのは「四年後の夏」「ささやく壁」どっちも記憶に残る好きな