内田春菊/ファザーファッカー

内田春菊さんの本ではじめて読んだ本。

ファザーファッカー (文春文庫) - 内田 春菊
ファザーファッカー 内田 春菊

◆制作
1996年 日本 文藝春秋

◆あらすじ
内田春菊さんの自伝的小説。十五歳のとき、家を出る事になったいきさつ。性的虐待の被害者側から書かれた本。

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薄い本なのだけど、内容は薄くはなかった。どこまでが実体験なのかは、知らないけれど
そういう事は、問題にならないと思う。

この本を読んでなかったら、その後の内田さんの本は読んでなかっただろう。申し訳ないけど彼女の漫画は読んだことがない。本職は漫画家なんだと思うんだけど。漫画も小説も表現するという点では同じだからか、彼女の本は読みやすく情景が浮かぶので好き。

静子が友達にいたら何と言っていいかわからなくて、言葉にならない気がする。

率直なとこが好きだな。リアリストでたくましいとこも。難しい言葉を使っているわけじゃなく、ダイレクトに入ってくる。頭がいいというのは、静子のような人だと思う。

印象に残ったのは、家を出た時の情景。悲観とか絶望とか恨みとか、あの立場ならもちそうなマイナスな感情より、先に進もうとする感じが潔くて好き。彼女の性格なんだと思う。しなやかに強い。それが読後感を悲壮なものにせずにすんでる。

いい意味で語り口が軽い。大変だったろう事も柔らかく時には受け流し時には考えて行動し、時には忘れ時には助けられてる。絵の才能に助けられたと書いてるのを読んだことがあるけど、彼女に絵の才能がなくても、しなやかに強いまま生きてる気がする。

驚くのはこれを公に出したこと。公にしたら何を言われるか想像がついたはず。それでも出した。その勇気に頭が下がる。