ミネット・ウォルターズ/昏(くら)い部屋

 記憶がないって怖い。

昏(くら)い部屋 (創元推理文庫) - ミネット・ウォルターズ, 成川 裕子
昏(くら)い部屋  ミネット・ウォルターズ,


◆制作
原題:The Dark Room 2005年 イギリス 東京創元社

あらすじ
病院で目覚めたジェイン。どうやら車から投げ出されて病院に担ぎ込まれたらしい。車は大破。周囲は自殺と疑っているらしい。ジェインには目覚める前の10日間の記憶がない。

傷も癒えぬ間に、親友と元婚約者が惨い殺され方をしているのを知る。自分は本当に自殺しようとしたのか。周囲で何が起こっているのか。そして、自分が容疑者であることを知らされる。誰を、何を信用すればいいのか。

10日間の記憶に何が隠されているのか。

***

登場人物が多い割には、犯人は見つけやすかった気がする。誰が一番抑圧されてるか、を考えると1人だけ極端な人がいたから。

犯人がわかっちゃうと面白くないか、というとそうでもない。主人公のジェインの心の動きはなかなか読ませてくれる。短期間でも記憶がないってのはちょっと怖い。自分が何をしたのかわからない。自分が何をされたのかわからない。少しずつ戻ってくる記憶に、恐怖感を増すばかり。思いだしたいが思い出したくない。始末に負えない。

何が起きたのかわからない限り、誰を警戒していいかもわからない。誰を信じていいかもわからない。もし自分が被害者なら、信じた相手が犯人ならこんな恐ろしい事はない。

そういう中で、ジェインが出発点にしたのは自分の性格。そこから1つずつ、積み上げるようにして考えを進めていく感じは読んでて楽しい。ジェインと対極にいる犯人の心中を考えるとぞっとする。多分、彼には心安らぐものはなかったんだろうな。