トマス・H・クック/緋色の迷宮

思い込みって怖い。

緋色の迷宮 (文春文庫 ク 6-15) - トマス・H. クック, Cook,Thomas H., 潔, 村松
緋色の迷宮 (文春文庫 ク 6-15) - トマス・H. クック


◆制作
原題:RED LEAVES 2006年 アメリカ 文春文庫

あらすじ
8歳の少女が失踪した。もしかしたらベビーシッターをしていた息子が誘拐して、いたずらして殺したのかもしれない。その不安を拭いきれず。
考えてみれば、自分の兄にもそういう性癖があってもおかしくない、と思わせる心当たりがあった。
幸せだと思っていたのに、失踪事件を境にして彼の不安の種はどんどん大きくなっていく。
自分を作った家族、自分が作った家族、その両方が徐々に崩れ始めたらどうすればいいのか。

***

クック節は健在といってもいいなって感じだった。

主人公のエリックは、妻(メレディス)と息子(キース)の3人暮らし。エリックの母は亡くなっていて、父は老人ホームに兄は健在で妹は病死している。

事の起こりは、息子がベビーシッターをしていた8歳の娘(エイミー)の失踪事件。エイミーの父はキースがエイミーに何かしたと思う。警察も弁護士も、その可能性を頭に入れつつそうではない可能性も考慮して動いている。キース本人は、自分は何もしていないと言うけれど、エイミーの失踪に関係あるのかないのか、嘘をついてる節もある。

人っていろんな顔をもってる。キースみたいな子供でも。エリックは、自分が知らないキースの顔をこの事件をきっかけに知ってしまう。それがエリックを不安にさせてしまう。

その不安が彼の中の判断を鈍らせてしまい、妻を疑い兄を疑い父を疑う事になる。自分の周りの人を疑う事で、孤独感が増すあたりの描写はクックらしいと思う。エリックだけが悪いわけじゃないんだけどなぁ。

キースとエリック、エリックとエイミーの会話が暖かく切なかったな。