ブレスレット 鏡の中の私/彼女を有罪と思うか否か

 リーズ役がよかったな。


 
◆制作
原題:La fille au bracelet 2020年公開。制作フランス・ベルギー。

◆キャスト
リーズ(メリッサ・ゲール)
リーズの父(ロシュディ・ぜム)
リーズの母(キアラ・マストロヤンニ)
検事(アナイス・ドゥムースティエ)
弁護士(アニー・メルシエ)
 
◆あらすじ
姉妹のように育ったフローラとリーズ、そのフローラが殺され16歳のリーズが逮捕され裁判がはじまる。リーズは冷静で時に沈黙する。友人たちの証言により、フローラと喧嘩していた事やリーズの奔放な性が明らかになる。親の知らない少女の姿に両親は戸惑う。相反する証言、確実な物証がなく真相があいまいになっていく。そんな中判決が下される。

***

リーズが有罪か無罪かというより、リーズの家族の在り方を描いた作品と言った方がいいのかもしれない。そしてその家族はどこにでもいそうな家族。もし、家族がいきなり殺人罪に問われたら、家族はどうなってしまうのか。

リーズの両親は仕事を休まざるを得ず収入的に厳しくなっていく。が、父はリーズを心配し裁判に同行、母が仕事を優先する。裁判の中で明かされるリーズの姿に父はショックを受ける。始終子供達について口うるさくなっていた父が、ある日「娘は大人になったんだ」と受け入れた台詞は印象的だった。

一方、母はお金が必要だった事、仕事に逃げていた事、娘への思い、フローラの母の顔を見るのが辛い事、そういうすべての事に立ち向かうエネルギーがない事を裁判で話す。あの母の証言は無駄がなく母の思いが詰まってた気がする。

弁護士と検察官、責めようとする検察官と違う見方もできますよねという姿勢の弁護士。この戦いもよかった。父、母、リーズ、リーズの弟、検察官、弁護士、それぞれがいいキャラになってた。

とはいえ法廷物なので、どうしてもリーズは有罪なのか無罪なのかと考えてしまう。映画の中ではどっちにでも取れる作りになっている。見る人によって答えは変わりそうだし、いろいろ想像できて楽しい。リーズが冷静で大人になり切れておらず、かといって子供でもない時期なのが物語をさらにわかりにくくしている。リーズ役の女優さんがいいのかな。

個人的にはリーズは無罪な気がする。裁判官に「殺さなかった?」と聞かれたリーズは「そうです」と答えている。字幕版と吹き替え版は多少違うのかもしれないけど。(私は字幕版で視聴)

ガソリンスタンドでハンドルに体を預けている映像を見せた検察官。「普段もこの姿勢を?」「疲れて」「疲れた姿勢?」「そうかも」「このときこの姿勢をとった理由は?」
「とりたかったからとっただけ」「このときのあなたは普段と違うのでは?」「眠れなくて疲れてただけ」「普段のあなたと違いますよね?」リーズが黙っていると「私の最後の質問にあなたは沈黙した」と検察官。

あの年の頃なら私も沈黙したと思う。なんとか責めたい検察官の気持ちはわかるが、すでに答えてるのに何度も同じことを聞かれたら、何を答えても納得しないんだろうなと思いそう。

凶器ではないかと疑われた別荘に会ったナイフセットの時も同じ。1本ないナイフの事をまたもや執拗に聞く検察官。同じ質問にイラつきながらなんとか答えてるリーズが「知るわけないわ」とぼやいたり。リーズが黙り込むのは説明しても信じて貰えなかったり、答えに窮して、私が犯人ならという仮定で話した答えを揚げ足取られたりするからのように思える。

判決が下って足枷を外した後、リーズはネックレスを足首に巻く。素直に考えれば有罪だから巻いたとも言える。が、私がリーズで有罪ならなんとなく巻かないと思う。終わった事だし、半年の留置とその後の足かせ。サイコパスでもない限り思い出していい事はない。逆に無罪なら巻くかも。幼いころから共に育ったフローラ、思春期にごたごたはあったにしろ、情はあっただろう。彼女が亡くなった事件のせいで自分も傷ついた。足枷をつけるというより、その事実も含めて自分と思う気がするのは考え過ぎだろうか。

ただ、遺体の鑑定結果を見ると、彼女以外に考えられない気がする。他に動機をもつものも想像できない。とはいえ、全部の情報が出ているわけではなさそうなので(例えば赤い柄のナイフの鑑定結果とか)なんとも。

もしかしたら私がリーズを無罪と思うのは、解りあえないなと思うと感情を出さなくなるし黙り込む性質だからかも。解って貰える相手には感情を出すんだけど、その不器用さに似たものを感じてるのかな。

元の作品はこれらしい。 ガエル・ガルシア・ベルナルが出てたらしいので、こっちも観たかったなー。

少女Aの殺人 容疑者ドロレスは、本当にカミラを殺したのか? [DVD] - ラリ・エスポジット, ゴンサロ・トバル, ゴンサロ・トバル, ユリセス・ポラ・ガルディオラ, ミッキー・バイ, ラリ・エスポジット, ガエル・ガルシア・ベルナル, レオナルド・スバラーリャ, イネス・エステベス, ダニエル・ファネゴ, ジェラルド・ロマノ
少女Aの殺人 容疑者ドロレスは、本当にカミラを殺したのか?