京極夏彦/今昔百鬼拾遺 河童

 女子高生のちょっとした話を入り口にどんどん話が危なくなっていって、最後に泣かされる事になるなんて。

今昔百鬼拾遺 河童 (角川文庫)


◆制作
2019年 日本 角川文庫

◆あらすじ
昭和29年、夏。次々と奇妙な水死体が浮かんだ。その水死体はお尻を出したままだった。3体目発見の報せを受けた科学雑誌「稀譚月報」の記者・中禅寺敦子は、薔薇十字探偵社の益田が調査中の模造宝石事件との関連を探るべく現地に向かった。

第一発見者の女学生・呉美由紀、妖怪研究家・多々良勝五郎らと共に怪事件の謎に迫るが、そこには山奥を流れる、美しく澄んだ川で巻き起こった惨劇と悲劇の真相には悲しい物語があった。

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やっぱり京極さんの本は好きだな。女子高生のちょっと雑談から始まる河童の伝説。河童は尻子玉が好きという。界隈ではのぞき魔が出没しているとか。そしてお尻を出したままの遺体。似た感じの話があちこちで聞かれるものの、肝心の事件の方がよくわからない。

河童の話から親戚の家に行こうと思う美由紀。薔薇十字探偵社の益田から事件の話を聞く敦子。その2つが同じ場所に行きつく。

そして事件は最後に向かっていく。犯人が見えてきても目が離せない。何故なら急がないともう一人被害者が出そうな感じがあるから。そして全ての謎が解けた時、そこには悲しい話が出てくる。あれはきつい。あんな状態で生きてきたなんて悲しすぎて胸がつぶれそうになる。誰か一人気づいていたら、助けてと彼が言えていたら、こんな悲しい状況にはならなかったんじゃないかと思う。でもそれが出来ない事(人)もいる。読み終えた後、しばらく余韻が消えなかった。