ジョン・マーテル/断罪弁護

最初は、トム・クルーズが主役を演じた「ザ・ファーム法律事務所」にストーリーが似てるようなと思ってたけど、話はとんでもない方向へ。これだからやめられない。



◆制作
原題: Conflicts of Interest 1996年 アメリカ 徳間書店

◆あらすじ
セスは、サンフランシスコでもトップクラスの法律事務所で仕事をしていた。恋人や痴呆症の父を気にしていないわけじゃないが、せっかくのチャンス。やってみたい気持ちはわかる。その為に、自分の睡眠さえ犠牲にしてた。

が、セスの感覚は古い体質の法律事務所には気に入られず、上院議員が持ち込んだ勝ち目のない訴訟を押し付けられる。上客の依頼を失敗すれば解雇になる。

***

持ち込まれた事件は、愛する人の死の原因究明。彼は軍人だった。トップガンが墜落死した原因。軍機密に関わるかもしれないとあっては、そう簡単に情報が得られそうもない。周辺の聞き込み、爆撃機の専門家、片っ端から話を聞いて回る。

噂はある。が、噂では法廷に持ち込む事さえ出来ない。そんな中、やっとの思いで探し当てた証人達が、次々と口封じの為に殺されていく。

勝ち目がないといえば、これほど勝ち目のない裁判はないだろう。口のかたい軍人達、軍の内部にさえなかなか入れない閉鎖的な社会。爆撃機の構造、軍の体質、そういうものに阻まれて、遅々として進まないのが、いらだたしい。おまけに、警告とさえ思えることまで起きる。

ミステリーは大抵そうだけど、専門的な難しい事を主人公が知らず、主人公を読者と同じ立場に置くことで、わかりやすく書かれている。詳しくはわからなくても、おおまかにはわかるようになってて、知らない世界を、ちらっと見せてくれるのも、読んでて楽しい。

車で走りまわり仕事に熱中し、でも一方では恋人や痴呆症の父や自分の将来や、そんな事に心を砕く。どこにでもいそうな男性が、この件をやりとげる熱意に魅入られる。
いいキャラだったな。