デクスター・ディアス/誤審

濃密なリーガルサイコサスペンス。

誤審 (角川文庫 テ 5-2) - デクスター ディアス, Dias,Dexter, 威蕃, 伏見
誤審 (角川文庫 テ 5-2) - デクスター ディアス

◆制作
原題:Error of Judgement 1999年 イギリス 角川文庫

◆あらすじ
ロンドンで売春宿に金槌を持って現れ、死体を埋めたと主張した男の供述から、頭部に損傷のある白骨化した死体が見つかった。

弁護を担当するニックは、この男と死体の身元を調査し始める。だが、男は記憶を失っているばかりか、心神喪失に陥っており、ろくに会話すら成立しない。
調べが遅々として進まない中、ようやく死体の顔が復元された。なんと、その顔は、加害者の男そのものだった。

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お互い手の内がわかっている同棲相手、サリー。サリーは相手側。私生活でも煮え切らないニックと、結婚や子供の事で揉め法廷でも戦う相手に。法廷でも私生活でも、わかっているからこそ時にややこしくなる。

おまけに容疑者の妻がからんで、ニックの恋愛模様はだんだん複雑になっていく。容疑者の妻エリザベスは、わからない女性。怪しげでセクシーで頼りなげ、かと思えば驚くほど冷たい女性。わからなさに惹かれ、余計にややこしくなる。

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この話にピリッとスパイスを聞かせてる女性がアン。精神科医でニックとサリーの友人でもあるのだけど彼女の確信を付いた言動が、この話を軽く読ませてくれてると思う。卑猥な話も確信をつく言動も、決して行き過ぎてない。品の良さに好感。

ニックが監房入りした時、(弁護士が監房入りというのは、かなり怖いだろう。)そこへアンがたずねて来る。善人なんだろう。押し付けがましくなく、相手の気持ちを楽にさせる台詞は、どんな言葉使いをしても品がいい。相手を思う気持ちが根底にあるからだろう。

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事件と私生活に振り回され煮え切らないニックと、手ごわくてしっかり物のサリー。そしてアン。怪しげなエリザベスとその夫で容疑者のウィル。

復元された顔が、自首したウィルと瓜二つな事、誰が嘘をいい誰が真実を語っているかという事、事件の謎と人間関係の混沌が絡み合い話を面白くしている。

こういう小説だとわからないままに終わる事も多いけど、最期にすべてが収まるべきに場所に収まってるのもいい。読後感はすっきりして、思い出し笑いしたくなる感じだった。