エドワード・スチュアート/惨劇の記憶

古いのかな。面白かったのにな。



◆制作

原題:Privileged Lives 1993年 アメリカ 新潮文庫

◆あらすじ
マンハッタンの超高級マンションの一室から、美青年の悲しい姿が発見される。男性は裸で皮の拘束マスクをしていて、片足が切断されていた。

男性の身元を探る刑事のもとに、7年前の殺人未遂事件で、昏睡状態に陥っていた女性ベイブが昏睡から覚めたという知らせが届く。

***

 7年前の事件は、夫が有罪答弁取引をしていてすでに釈放されていた。7年ぶりに覚醒したベイブは、美青年の事件の詳細を何故か話しだす。

眠っていたはずのベイブが、何故、青年の事件を知っているのか。7年前の事件は、夫が有罪答弁する代わりに詳細が伏せられていた。

無関係に見えた二つの事件が、複雑にからみあう。超高級マンションで密かに、麻薬の売買を行っている売人。7年前の事件の被害者でデザイナーだったベイブ。その夫。7年後、成長してモデルになった娘と、仕事仲間でパーティーに集まる人達。

一方、マンションを売る営業マン、事件を追う刑事とその娘。刑事の仕事仲間や、化粧品を売る店を経営している人、病院の看護婦など、住む世界が二分されているのが面白い。二分された世界のどっちが幸せか。は、人によるだろうけど。

7年ぶりに覚醒したら周囲は変わっていて、戸惑いながらも自分の仕事や生活を取り戻そうとするベイブ。

それに青年の事件の詳細を、何故自分が知っているのかという疑問がついてまわる。

7年前、取引によって封印された事件の詳細を、夫も娘もベイブの母さえ教えてはくれず、当時の記憶は曖昧。ベイブは7年前の事件の真相を探り始める。

そんなベイブを見守りつつ、情報を引き出しつつ、事件を解こうとする刑事。そんな刑事を愛して気づかう娘。その対比もおもしろかった。

刑事や娘の暖かい感覚と、青年を殺害して放置する犯人達の感覚の違いも、また対比になってる。上下巻は長い話だけど、この本は長いと感じなかった。