パトリシア・カーロン/沈黙の代償

 カーロン、3作目。前に読んだのは「四年後の夏」「ささやく壁」どっちも記憶に残る好きな作品だったので、読むのを楽しみにしてた。



◆制作
原題:Crime of Silence 2001年 オーストラリア 扶桑社

◆あらすじ
息子を誘拐された新聞記者カイリーは、ホテルマンから身を起こし大富豪となったジョージに電話をかけた。数ヶ月前に娘を誘拐され、大金と沈黙を引き換えに娘を取り戻したジョージに、カイリーは息子が誘拐された事、その際、子供をみてくれていた隣家の女性が亡くなった事を告げた。

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苦しかった。とても薄い本なのに何度も置いた。胸に重たい石でものってるかのように、苦しくて辛かった。罪悪感がテーマだと読むのもきつい。それでも最後まで読めたのは、カーロンだからだろうな。

娘を取り戻す条件として大金を払い、その後沈黙を守る事に同意したジョージ。カイリーはそこをつつく。ジョージが黙っていたせいで、類似の事件が起こったのだ。

ジョージが娘を取り戻した後、犯人に関する情報を警察に話していれば、犯人は捕まっていて、自分の息子は誘拐されずにすんだかもしれない。ジョージに選択肢はなかったと思うけど、ジョージにすれば居たたまれない。

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そこに隣家の女性の遺体という問題が。カイリーの息子が誘拐された時、子守をしていた隣家の女性は命を落としている。彼女が亡くなくなっている事を、警察に届ければ誘拐事件が発覚してしまう。そうすれば、カイリーの息子は戻らない。

警察に情報を提供していれば、そう言われてジョージは自分からカイリーに協力していく。
カイリーはとても人好きのする人物ではなく、反対にジョージは罪悪感にさいなまれ、とても苦しそう。

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読んでいる途中で、もう1つ物語が出来るなと思った。実際に見えている事件の裏に、企まれた話。そう思っていたら、それをカーロンは逆手にとった。

企んだと思ったでしょ?でもねって、最後の数ページでもう一回、ひっくり返してくれた。さすがだ。ただそれを読んでも気持ちはすっきりとはしない。悲しくて切ない。
そんな読後感。それでもカーロンは好き。