トマス・H・クック/夏草の記憶

学生の頃の記憶って、妙に鮮やかに残ってる気がする。そんな時期に事件が起きて、身近な人が被害者だったら。

夏草の記憶 (文春文庫 ク 6-9) - クック,トマス・H., Cook,Thomas H., 芹澤 恵
夏草の記憶 (文春文庫 ク 6-9) - クック,トマス・H



◆制作
原題:Breakheart Hill 1999年 アメリカ ‎ 文藝春秋

◆あらすじ
名医として町の尊敬を集めるベンだが、今まで暗い記憶を胸に秘めてきた。それは30年前に起こったある痛ましい事件に関することだ。

犠牲者となった美しい少女ケリーをもっとも身近に見てきたベンが、ほろ苦い初恋の回想と共にたどりついた事件の真相は、誰もが予想しえないものだった。

***

憧れていた、好きだった少女ケリーの気持ちがつかめず思い悩むベン。思春期にはよくある話。事件さえ起こらなければ。

ケリーを好きな少年が他にもいて、その頃のベンはぱっとしなくて自信がもてない。学生時代って、真面目で誠実な人より口の上手いタイプがもてたりする。

ケリーもベンが嫌いじゃない。否、それどころかまんざらでもない。だけど少年の気持ちを察して動けるほど大人にはなってなくて。

そんな初恋の背景に、その時代が重なる。ちょっと危なっかしい正義感や好奇心、無鉄砲な行動。そんな事も他の人には笑って振り返る思い出だろうけど、ベンには振り返るのが辛い。

30年後、ふとした事から事件を振り返り始めるベン。あの頃見ていたものを別の角度から見ると、違った解釈が出来違った景色が見える事に気が付く。

1度、そこに気付いてしまうと気になってしまう。ベンが事件の真相を求める気持ち、わかるなー。そして30年前の事件の真相にたどり着いた時、切なすぎる。

この切なさが、トマス・H・クックだよなー。