もっと遠くへ行こう。/共に変化出来なかった事のずれ

「もっと遠くへ行こう。」のあらすじとキャスト。

もっと遠くへ行こう。


◆キャスト
ヘン(シアーシャ・ローナン)
ヘンの夫ジュニア(ポール・メスカル)
テレンス(アーロン・ピエール)

◆その他

制作2023年 アメリカ・オーストラリア・イギリス合作

◆あらすじ
ヘンとジュニアの夫婦は、ジュニアの家系が代々受け継いできた人里離れた土地で静かに農業を営んでいた。

ある日、夫婦のもとへ見知らぬ男がやってきた。テレンスと名乗る男は、ジュニアが宇宙への移住要員候補に選ばれたと言う。2065年までに真水と居住可能な土地は不足し、都市は過密になる。だからこその移住要員候補。だが選ばれたのはジュニアのみ。ヘンは行けない。
行かないと言う選択肢はあるのかとジュニアはヘレンスに問う。だがその選択肢はないに等しかった。

ジュニアが宇宙へ行ってる間の2年間は、彼の代わりの人物、リプレイスメントがヘンと共にいるという。リプレイスメントはクローンのようなもので、ジュニアの記憶までも受け継いでいた。

ヘンはリプレイスメントと暮らし始める。時々テレンスは変を訪ねた。そうしているうちに、ジュニアが宇宙から戻ってきた。リプレイスメントは自分が本物の人間だと思っていて、処分されることを知りショックを受けヘンの名を叫ぶ。ヘンはリプレイスメントをかばう。そのヘンの姿を見ている本物のジュニア。

もとの夫婦の暮らしに戻ったが、夫婦はギクシャクしはじめる。妻が自分を裏切ったと感じてしまうジュニア。そうではない、あなたを愛してただけと言うヘン。なんとかやり直そうとする2人だが。

***

ハンナのシアーシャ・ローナンが出てるので見始めた。シアーシャ・ローナンが美しい。お化粧してるわけでも、綺麗な服を着ているわけでもないのに、水を飲む時、自転車をこいでいる時、日常の中にいる女性が美しい。

後半で印象がひっくり返った。それまでまったりとしていたものが、ジュニアの帰還から口論が増える。途端にシアーシャの影に隠れていた夫役のポール・メスカルの良さが前に出てきた。

ヘンとリプレイスメントが抱き合いかばい合う姿を、ジュニアが見ている。リプレイスメントの悲しいポールの表情と、唖然としてるジュニアのポールの表情が記憶に残った。

農場に雨が降り大喜びして雨の中に飛び出すヘン、ジュニアも引っ張り出すが、ジュニアは宇宙にいたせいで筋力が弱っていて転び、何をしてるだかみたいな感じで部屋に戻っていく。楽しさを共有しようとするヘンと、雨に濡れてはしゃぐヘンを馬鹿なことをしてるという風に見るジュニアのすれ違いが見ていて悲しかったな。

ヘンはジュニアの記憶を持ったリプレイスメントと時を過ごし共に変化した。本当のジュニアは共に変化出来なかった。

ジュニアはヘンを愛している気持ちを、上手く伝えられず押し付けてしまうが、それにきがついてない。なんとか日常のペースに戻れば、2人の関係も元に戻るはずと思ってるみたいだった。ヘンは責められ押し付けられても、まだ出て行こうとはしていなかった。あの雨のシーン、2人で笑う事が出来ない、2人で楽しむ事が出来ないと解った時点で、自分が愛したジュニアはいないのだと感じた気がする。気持ちというのは、相手が受け取れなかったら役に立たないのだな。

ヘンとジュニア、それぞれのラストが良かった。