名もなき復讐

見るともなく見てしまった。それだけみせたという事なんだろうな。


◆制作
原題:The Lost Choices 2016年 韓国

◆キャスト
シン・ヒョンビン
ユン・ソイ
アン・セハ
チョン・エヨン
チョ・ヨンジン
キム・ヨンソン

◆あらすじ
 ●不運のはじまり
射撃の代表選手候補だったジウンは、交通事故に合い両親をなくし、彼女自身も言語障害を負いうまく話せなくなってしまう。射撃の道を絶たれ、無気力なまま工場で働く事に。

ある日、彼女は男たちに襲われる。廃屋に連れ込まれ、抵抗もむなしく抑えつけられ、殴られ、犯される。何度も何度も。

男たちに開放され警察に行くが、女は嘘をつく。レイプ被害を訴える女性の大半は嘘だ。お前もそうじゃないのかとパクという刑事にひどい扱いを受ける。

 ●歯車は狂う
絶望し憔悴した彼女が家に戻ると、襲った相手の1人が家にいた。残った力を振り絞って無我夢中で抵抗しているうちに、相手を殺してしまった。

女性刑事のカンが、仲間の刑事の非礼をわびもう一度話を聞かせて欲しいと訪ねてくるが、その時すでにジウンは犯人の1人を殺してしまっていた。

1人殺したのがきっかけのように、ジウンは次々と人を殺してしまう。嘘の被害だと思ったパク刑事がジウンをゆすってきた時、彼の銃を手にし撃ち殺してしまい、その銃を部屋へ持ち帰った。

ジウンの親友ウォンギョンを薬漬けにしようとした会社の社長、ウォンギョンを滅多打ちにし暴力を振るったウォンギョンの彼氏、自分を犯した男たちの残りを見つけ出し射殺。

 ●カン刑事の決断
あ自殺しようとしたジウンは、関係時の説得に応じ銃を手放すがその銃を拾った男(ジウンを襲った最後の1人)に撃たれてしまう。

脳死状態のジウンの肝臓は、ジウンを撃ったレイプ犯に移植されると看護婦たちが噂しているのを聞いて、カン刑事はジウンの酸素マスクをはずす。

カン刑事には妹がいた。その妹はレイプ被害に合い、今も病院から出られない。

***

復讐する映画はすっきりするかといえば、ちっともしない。何故なら、復讐してもなかった事にはならないから。

ジウンの両親が亡くなった事故に、親友のウォンギョンが関わっているが、そのことをジウンは知っていて、彼女宛の手紙に恨んだことはない。責任を感じるなと書いてあり、お金も残している。

ジウンは事故の事までは、ある程度心の整理がついていたのだろう。あきらめも入ってはいるかもしれないが、人を恨んでも仕方ない。

心を癒し、前を向く準備をしていたような気がする。それをあの暴行事件がつぶした。心も体も元に戻れなくなった。

あの日、私は死んだとジオンが言う通り、引き返せなくなった。幸せに再びなろうとする道を壊した。その結果があれなのだろう。辛いな。カン刑事がジウンのマスクをはずしたシーン。あれがこの映画の良さな気がする。

どちらかのマスクを外すとしたら、私もジオンのマスクを外す。ここにきてまでジオンの体を傷つけさせたくない。

レイプ半のマスクを外しても、ジオンが脳死状態なら他の人へ移植する為に、体を開かれる可能性は残る。どっちにしても時間の問題なら、早く楽にさせてあげたい。ジオンのマスクを外すしかないやないか。