リチャード・ノース・パタースン/サイレント・ゲーム

過去の悪夢がよみがえる。

サイレント・ゲーム〈上〉 (新潮文庫) サイレント・ゲーム〈下〉 (新潮文庫)


◆制作
原題:Silent Witness 2005年 アメリカ 新潮文庫

◆あらすじ
弁護士のトニーの元に、高校時代の親友から依頼があった。親友は今は教師をしていて、教え子の生徒と関係をもち殺人の容疑がかけられいるという。

***

主人公のトニーが10代後半(学生だった)の頃、当時付き合っていた彼女とデートして後でこっそり家を抜け出して戻ってくるね、と言った彼女を待っていた。が、いくら待っても戻ってこない。探しに出たトニーは彼女の変わり果てた姿を発見する事に。しかも、発見して彼女にかがみこんでいる所を、彼女の両親に見られてしまう。状況はトニーにとってかなり不利。

弁護士のおかけで起訴されることはなかったけれど、はっきり犯人が捕まったわけではなく灰色の立場のまま。彼女の両親からすればトニーが犯人ではなくても、抜け出すきっかけを作ったというだけで憎むべき相手に。

彼女の両親は悲しみのあまりトニーを責める。自分が犯人じゃないというひと言が、両親の心の傷をよけいに大きくする事が、わかっているから、トニーは何も言えない。

けれど何も言わないのは彼が犯人じゃないかと周囲は疑ってしまう。言いたくても言えない。本当の事を知ってるのは自分だけ。

このあたりのトニーの苦しい心情を読んでいると切なくなる。小さな町で悪評を立てられた事と、助けてもらった弁護士をみていてトニーは町を出て弁護士になった。

それから何十年と月日がたち、一度も帰らなかった町から一本の電話が入る。学生時代の友人が、昔のトニーと同じ疑いをかけられているという。

迷ったすえ、トニーは友人の弁護を引き受けた。この事件が、トニーの昔の事件を解決する事になるとは知らずに。恋あり、師弟愛あり、家族愛あり、信頼と裏切り、法廷でのかけひきともりだくさん。

内容が濃くて面白すぎて、最期の方は読み終えるのが、さびしいぐらいだった。