スー・グラフトン/アリバイのA

 ABCと続くシリーズの最初のA。



◆制作
原題:"A" Is for Alibi 1987年 アメリカ ハヤカワ書房

◆あらすじ
キンジーのオフィスを訪ねてきたのは、8年間の刑務所暮らしを終えたばかりの女だった。彼女ニッキは有能な弁護士である夫を毒殺したとして有罪を宣告されたのだが、わが身の潔白をなんとしても証明したいという。

興味をおぼえ、当時の事件の洗い直しを始めたキンジーは、そこで意外な事実に気づいた。件に関連のある事務所で働いていた若い女性会計士が同時期に同じ毒薬を飲んで死亡していた。事件との関係はあるのか。

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もともと警察で働いていたが、警察を辞め保険会社の調査員になったキンジー。そのうち、保険会社の一画を借りて探偵事務所をやりはじめた。とはいえすぐに探偵業オンリーになるわけじゃなく、保険の調査員と二束のわらじ。離婚歴2回、もてないわけじゃないが、おしゃれでもない。

口座の残高見て、仕事に必要な金額と生活費を計算して仕事がない時の生活費も考えると、欲しい物があっても後回し。ワンピース(ドレス)は皺が寄らない黒い服が一枚きり。後はズボン。化粧はしないが銃の手入れ(仕事の道具)はする。贅沢はしないし華やかでもないけど、自分で自分の生活をコントロールしながらやってる事に安らぎと不安がある。そんなキンジーが好き。

アリバイのAは、最初の本だからかキンジーがまだ揺らいでる気がする。それもまたいいんだけど。恋愛の誘惑に負けそうになったり、逆にはねつけたりとか、仕事の先行きに不安を感じてたり、自分という人間の性質や好みやそういう事をはっきりと意識してなくて、あれこれ迷ってる感じが好ましい。でも、そんな迷いにつけこまれギリギリの所で回避。

この後、キンジーは成長していく事になるんだけど、このシリーズは最初から読んだ方が楽しめるだろうな。