ロバート・デイリー/レイプ

タイトル、なんとかしてくれんやろか。カバーでもしないと外では読みにくい。


◆制作
原題:Hands of a Stranger 1994年 アメリカ 新潮文庫

◆あらすじ
NY市警の麻薬取締り班責任者のジョーは、仕事が多忙だったがその仕事にも今の地位にも家族にも満足してた。が、妻のメアリーは多忙すぎる夫に満たされずにいた。

ふとした事がきっかけで息子の野球チームの監督とそういう事になってしまうメアリー。監督とメアリーの密会の場に見知らぬ男が乱入し、メアリーはレイプされる。

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最初はどこかで聞いたような話。仕事に明け暮れる夫。多忙すぎて家族をほったらかし家の事は妻任せ。夫婦の間に溝が出来てる事にも気づかない。

一方、妻は満たされず、家政婦のような毎日。こんなはずじゃなかった。そんな倦怠期?に訪れた甘い誘惑。昼メロみたいな話の展開。

が、その密会の場にレイプ犯が乱入するあたりからミステリーになってくる。もともと人には言えない。おまけに夫を裏切ったという罪悪感と、そうさせたのは夫だという憎しみと、見知らぬ男に陵辱されたという痛みが交差する。

自分で自分を責め、他人からも責められる。被害者であるはずのメアリーが、責められる事になる。

夫のジョーも苦しむ。裏切った妻への憎しみ、犯人への憎しみ。監督への嫉妬。今まで順風だったはずの彼の人生が、角を曲がったらまるで違ってた。時計の針を戻せるものなら戻したいと思うジョー。

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性的なものや家庭の中の事は、表に出しにくい。その両方がこの事件にはからんでくる。事件を解き明かし犯人を捕まえようとすれば、捜査機関の人たちの目にさらす事になる。そして、それは夫ジョーの仕事仲間でもある。自分の感情と向き合うのでさえ難しいのに、同僚に家庭や性的な事を知られるのは耐え難い。

レイプという犯罪が辛いのは、体が汚されたというだけでは終わらない所なのかもしれない。生きている間、忘れようとしても忘れられない。その事実がよみがえってきては、何もかもぶち壊しかねない。一生、ついてまわりかねない苦痛と恐怖。おまけにジョーとメアリーには子供がいる。息子になんと説明すればいいのか。

ジョーとメアリーはどうなるのか。犯人はつかまるのか。タイトルのわりには読めたな。