ミネット・ウォルターズ/鉄の枷

口うるさい女性を黙らせる為の拘束具。なんだかな。



◆制作
原題:Scold's Bridle 2002年 イギリス 東京創元社

◆あらすじ
資産家の老婦人のマチルダ・ギレスピーは、血で濁った浴槽に横たわって死んでいた。
睡眠薬を飲んで手首を切るというのは、よくある自殺の方法ではあるが、野菊や刺草で
飾られた中世の鉄の拘束具を頭に被ったまま、自殺するだろうか。
この拘束具は何を意味するのか。

***

アイアンメイデンは有名だけど、鉄の枷(かせ)は知らなかったな。
女性が話すのを止めさせる拘束具だったそうな。
昔から女性はうるさいと思われていたんだろうか。それにしてもむごい。

上下本でもないのに、内容が凝縮されてる気がする。
老婦人が幼い頃に受けた心の傷が、すべてのはじまり。
老婦人の一生と言ってもおかしくない本。娘も孫も隣の夫婦も歯車が狂っていく。
とはいえ、老婦人が悪い訳ではない。彼女は彼女なりに精一杯生きただけ。

老婦人に気に入られ財産を残された女医さんとその夫、事件を解決する刑事さんの
3人の関係が、微笑ましい。
事件の背景に暗く陰湿なものがあるのに、読後感が切ないのはこの3人のキャラに
よるものが大きいだろうな。

女医さんの夫の画家さん、素敵な男性だと思う。
友達ならこんな面白い男性はいないだろう。でも、夫(彼)には遠慮したい感じ。

老婦人のお孫さん、呪縛から解き放たれるといいなー。