サラ・ウォーターズ/夜愁

 あっという間によんでしまった。サラ・ウォターズはやっぱり好きだな。

夜愁 上 (創元推理文庫 M ウ 14-4) - サラ ウォーターズ, Waters,Sarah, 有希, 中村 夜愁 下 (創元推理文庫 M ウ 14-5) - サラ ウォーターズ, Waters,Sarah, 有希, 中村


◆制作
原題:The Night Watch 2007年 イギリス 東京創元社

◆あらすじ

1947年、第二次世界大戦の爪あとが残るロンドン。ミッキーとケイ、作家のジュリア、ジュリアの同居人のヘレン、レジー、ヴィヴと弟のダンカン、ダンカンが身を寄せてる家の主、
マンディ、そしてフレイザー、アレック。
夜はそれぞれの隠された過去や心の傷をさらけ出す。



サラ・ウォーターズを知ったのはミステリーだったけれど、これは少し趣向が違う。何があったのか?と思わせる書き出しではあるけれど、謎とか事件という感じではなく、あくまでもそれぞれの過去の話。

その過去に色濃く影を落としてるのが、戦争。明日、生きていられるかどうかわからない。だからこそ、普段なら考えられない事をしてしまう。そういう状況の中で、心に負ってしまった心の傷。それが、丹念に描かれている。

他の本の方が物語としては楽しめるのかもしれないけど(何せミステリーだから)、この本が一番空気感みたいなものが出ている気がする。

恋愛のはじまり、相手と心が通う時ってお互い手探りする。自分の気持ちは相手に伝わっているのか。相手は自分のことをどう思っているのか。戸惑ったり、恐れたり、そういう繊細な心の動きが手にとるようにわかる。ただ、サラは読み手を選ぶだろうなと思う。私は好きだけど。