誰でも知ってるあのウィルスが、これだけ激しい苦痛を伴う症状で宿主を犯し、死に至らしめるなんて知らなかったな。
噛みついた女―ヒューストン連続殺人 デイヴィット リンジー
◆制作
原題:A Cold Mind 1983年 アメリカ 新潮文庫
◆あらすじ
巡回中のパトカーの前に飛び出した女は、警官の頬に嚙みついた。警官は、思わず悲鳴をあげた。二人がかりでやっと押えつけた時、女は痙攣し息絶えた。
彼女は名を知られた高級娼婦だったが、彼女の死後続いて三人もの娼婦が不審死を逐げる。ヒューストン警察の捜査はまったく行き詰ってしまう。
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ヒューストン警察の面々は、それぞれプロらしくは書かれているが、キャラがはっきり浮かんでこないのは残念。はっきりしたのは主人公のヘイドンだけ。
主人公のヘイドンは頭が切れて穏やかな性格だが、警察の仕事をするには感受性が強すぎる性質。そのせいで体重はげっそり落ち、時々誰にも告げず行方をくらます。エドとかレオの描写が、もうちょっと欲しかったなと思う。
最初にもしかしてと思ったジュディスに対するサリーの扱いは、図星だったけど最後のシーンの理由に使われるとは思ってなかった。ありきたりかもしれないけど好き。
売春組織、狂犬病のウィルス、そしてそのウィルスを感染させる手口、感染後の病状の変化。ミステリーは知らない世界を覗けるのが楽しい。