ジョン・ソール/妖香

それぞれの満たされない思いが連鎖して、悲劇に繋がって。

妖香 (ヴィレッジブックス) - ジョン ソール, Saul,John, 芳夫, 野村
妖香 (ヴィレッジブックス) - ジョン ソール


◆制作
原題:Nightshade 2002年 アメリカ ヴィレッジブックス

◆あらすじ
痴呆のすすんだ祖母を引き取った日から、16歳の少年マットの生活は一変した。
裕福な母の再婚相手が、我が子同然にかわいがってくれ、幸せな日々だったのに。

「おまえの死んだ姉が帰ってくる」と騒いでは母をいじめる祖母、実母の横暴にじっと耐える母。屋敷には妖艶な香りが漂い、誰かの気配が。なにかがおかしい。

そんなさなか、狩猟中にマットはなぜか気を失う。気がつくとそこには額の真ん中を撃ち抜かれた継父の死体が。

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親子にも相性がある。その相性のいい子供を失った事が、アルツハイマー症になった祖母の満たされない思いを助長した気がする。もともと頑固で、付き合いにくい性格だったのか、
亡くなった姉に固執し、生きている妹ジェーンには見向きもしない。

母に愛されたいと願うのは決して悪い事じゃないけれど、それが満たされないマットの母、ジョーン。満たされないがゆえに、家庭が崩壊していくにも関わらず、母を病院に入れることも出来ない。姉と自分を比較して、余計に傷を深めてしまったショーン。

義理の父に可愛がられ、幼い頃の悪夢も消えたはずだった16歳の少年マット。母が祖母を引き取ってからは、幼い頃の不安が彼をむしばんでいく。時々、記憶が消え、その間に起こる出来事。

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子供、悲劇というのは、ジョン・ソールのテーマなんだろうな。時に子供は、未熟さゆえに残酷にもなりうる。その幼さゆえに、育つ環境が子供に与える影響を描いてる気がする。子供好きなのかもしれないな。

幽霊話や伝説を盛り込んでくるのは、今までと同じ。物語に引き込むのは、ジョン・ソール節顕在な感じ。ただ、最期で明確に救いを描いたのは、初めて読んだような。気のせいかな。