リチャード・パリッシュ/あなただけは許せない

自分がケイトだったら、どーするだろうと読みながらその問いが、ずーと頭の中で渦巻いてた。それを考えると、ぞっとしたな。

あなただけは許せない (新潮文庫) - リチャード パリッシュ, Parrish,Richard, 敬, 平田
あなただけは許せない (新潮文庫) - リチャード パリッシュ


◆制作
原題:Abandoned Heart 1997年 イギリス 新潮文庫

◆あらすじ
酒浸りの夫と別れたケイトは、三歳の娘ジェニファーと暮らし始めた。若き弁護士マイクと恋に落ち、再び幸福を手にしたかに見えたが、悲劇が起こった。

ケイトの留守中にジェニファーがレイプされ、HIVウイルスに感染してしまったのだ。しかも犯人は裁判で無罪となった。なぜ法律が犯罪者の味方をするの?絶望したケイトに残された道は1つしかなかった。

***

3歳の娘に手をかける人間なんて、想像もつかない。でも、世の中には少女をおもちゃにする人は現実にいる。3歳のジェニファーが、この後、どんな人生を送るのか、自分の心の中にある傷と、どうやって向かい合うのか。それを考えるだけで、切なかったな。変われるものなら変わってやりたい、そう思うケイトの気持ちが、痛いほど伝わってくる。

けれど、ジェニファーに起こった事は、ジェニファーにしか克服できない。どんなに歯がゆくても、本人が立ち向かう事を見守るしか出来ない。

こんな時、なんて人は無力なんだろう。その無力さが何も出来ない苛立ちが、犯人への怒りに拍車をかける。ただ、犯人の一人(手引きしたと言うべきか)を憎みきれない事情があって、それがまた話を複雑にしてる。

憎しみと許したい気持ちの板ばさみ。相手を許すのはジェニファーへの裏切りにさえ感じてしまう。

次々に新しい事実が出てくると、その事実に直面する度苦悩し、苦しむケイト。冷静に頭で理解できる事と、心や感情が理解する事が一致するのに時間がかかる。

そして法律。法律は復讐の道具になってはならないかもしれないが、犯人は無罪になったのに、3歳のジェニファーが背負うものを考えるとあまりにも理不尽すぎる。

これだけ、大人同士の虐待や子供に対する虐待が小説になるのは、それだけ現実に起きているからなんだろう。そう思うと、胸がぎゅっとなる。