ウィリアム・ディール/真実の行方

その事件の影には、表に出してはならない事件がもう1つあった。物語が二重三重に重なってて、面白かったな。


◆制作
原題:Primal Fear 1996年 アメリカ 福武文庫
◆あらすじ
街の聖者として慕われていたカトリックの大司教が惨殺され、その直後に血まみれの姿で発見された青年エアロンが、容疑者として逮捕された。天使のような美青年の悪魔のような犯行―検察は極刑を要求し、裁判は簡単に決着をむかえると思われた。

しかし、被告の無罪を勝ちとるためには手段を選ばない弁護士マーティン・ヴェイルの登場により、事態は意外な方向へ展開していく。

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街の聖者、大司教が、何故殺されなければならなかったのか。しかも、80箇所近い刺し傷による惨殺。事件は衝撃的で、注目を集める。容疑者のエアロンは、血まみれで発見された。
だが、エアロンには犯行時の記憶がないという。

捜査の段階で、大司教の影の顔が浮かんでくる。動機はこれなのか。大司教の醜聞は、事件関係者の頭痛の種。公にするには、影響が大きすぎる。エアロンに記憶がない以上、確かなものは何もない。問題はエアロンの犯行時の精神状態なので、精神鑑定が行われる事になる。

その鑑定の中で、美青年エアロンが見せる別の顔。果たして、演技なのか本物なのか。

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そんな中、裁判は幕を開ける。裁判は、順調に進んでいるかに見えた。が、最期にきて、検察側がひきがねをひく事になろうとは。そして、裁判が終わった後、やり手弁護士のマーティンは驚愕の真実を知る事になる。

二転三転するストーリーが面白い。リーガルだけど、ひきこみ方が自然でいい。エアロンの人格をどうみるか、弁護士のマーティンの心の葛藤。大司教の影の顔、検察側との駆け引き。たくさんの要素があって面白い。

誰が誰を利用したのか。それは多分3部作の最後で明かされるのだろうけど3作目だけは翻訳されてないのが悲しい。版権の問題らしいのだけど。出来れば翻訳で出して欲しいな。