ジャック・ケッチャム/老人と犬

 人を怒らせるという怖さ。



◆制作
原題:Red 1999年 アメリカ 扶桑社

◆あらすじ
老人が愛犬と共に川釣りを楽しんでいる。そこへ少年が三人近づいて来た。一人は真新しいショットガンをかついでいる。その少年が老人に二言三言話しかけたかとおもうと、いきなり銃口を老人に向け金を出せと脅した。

老人がはした金しか持っていないと判ると、その少年は銃を犬に向けて発砲した。愛犬の亡骸を前に呆然と立ち尽くす老人。笑いながらその場を立ち去って行く少年たち。老人は然るべき裁きを求めて行動を開始する。

***

老人は愛犬とともに穏やかなな毎日を送っていた。彼にとって愛犬は、ただの犬ではなく相棒。そんな相棒を、少年達は殺してしまう。彼らにすればたかが犬。ちょっと小遣いが欲しかっただけ。そんな軽い気持ちでしかない。

老人は、少年達のそれぞれの家へ行く。少年達の親も、罪悪感はそれほどないらしく、犬が死んだぐらいでと思う親さえいる。

***

世代の差という人もいるかもしれないが、人間の差という方がいいかもしれない。なんでもお金で済むと思っている親に育てられた子供は、親を見習ってお金で済むと思い、悪い事をしたと思う親の子供は、やはり親を見習って悪い事をしたとびくびくする。

老人が要求しているのは、お金ではなく少年達の本当の心の中にある悔恨。頭でわかる事ではなく、体感としてわかる事を要求する。それが、わかった時、自分達がした事の大きさがわかる。

同じ事を言っても重みがあるかどうかは、その人の生きる姿勢によるのかも。ここに出てくる老人は重い。ずしっと腹に一本筋の通った重さがある。

少年達とその親は、それがないから怖い。怖いから、なんとか他の手で回避しようとする。その場しのぎなのは、本人達もわかっているだろうに。

ジャンルとすればホラーなのだろうけど、人と人の差。の差が幸せと思えるか思えないかを形作ってて、人の為ではなく自分の為にしっかり生きよと言われてるような本だったなと思う。