トマス・ハリス/レッド・ドラゴン

 今のとこ、ハリスさんが書いた中で一番好きな話かも。



◆制作
原題:Red Dragon 2015年 アメリカ 早川書房

◆あらすじ
満月の夜に連続して起きた一家惨殺事件。満月の日に遺体に噛み痕を残す犯人。元FBI捜査官のグレアムは犯人像の手がかりを得ようと、犯罪者病院に収容されている殺人鬼にして精神科医レクター博士に助言を求める。

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レッド・ドラゴンは口のあたりに少し傷があって、小さい頃から厳しく育てられている。それがレッド・ドラゴンからすれば、愛情とは感じられるものじゃなく、大人になっても、引っ込み思案で女性にも縁がない性格になってしまっている。

そういうドラゴンが起こした事件が、幸せな家庭の一家惨殺。死体を自分の家族のように妄想して配置する、まるるで恐怖のおままごと。

そんな彼に優しくしてくれる女性が出てくる。皮肉な事に事件を起こした後に。もっと早く彼女にあっていれば、犯行に走る事はなかったかもしれない、と思うドラゴンが切ない。もし事件を起こす前に彼女に出会えていれば、ドラゴンも被害者も全部が救われてたのかもしれないと思うとやるせない。

彼女が他の男性と楽しそうに話してるのを見て、やっぱり自分じゃだめなんだと思うドラゴン。ただの同僚なんだけど自信がないせいで誤解してしまう。愛情に飢えてびくびくしてる子供みたいに、早合点してしまう。

本だからいいけど、実際に近くにいたら面倒そう。聞く事もせずに思い込むって、誤解されてる事すら気が付かない事もある。気持ちはわかるけど。

トマス・ハリスっていろんな事を知ってて、本の中にたくさん出てくるけど、彼の本が好きなのはそういう賢さじゃなく、知ってる事を楽しみに繋げるところ。
知識は調べれば知る事が出来るけど、それを何に使うかって事を見せてくれるとこが好き。