第三夫人と髪飾り

 しなやかで美しく切ない。 

第三夫人と髪飾り(字幕版) - トラン・ヌー・イエン・ケー, マイ・トゥー・フオン, グエン・フオン・チャー・ミー, グエン・ニュー・クイン, レ・ヴー・ロン, グエン・タイン・タム, ラム・タイン・ミー, マイ・カット・ヴィ, アッシュ・メイフェア, チャン・ティ・ビック・ゴック, アッシュ・メイフェア, アッシュ・メイフェア
第三夫人と髪飾り(字幕版)


◆制作
原題:The Third Wife 2018年 ベトナム

◆キャスト
ハ第一夫人(トラン・ヌー・イエン・ケー)
スアン第二夫人(マイ・トゥー・フオン)
メイ第三夫人(グエン・フオン・チャー・ミー)
ラオ(グエン・ニュー・クイン)
富豪の旦那様ハン(レ・ヴー・ロン)

◆あらすじ 
19世紀の北ベトナム。14歳のメイは絹の里を治める富豪のもとに、三番目の妻として嫁ぐ。
穏やかでエレガントな第一夫人には息子がひとり、美しく魅惑的な第二夫人には娘が三人いた。一族にはさらなる男子の誕生を望んでいた。

メイは、この家では世継ぎを産んでこそ奥様になれることを知る。生きる場所も役割も最初から定められていた女たちの物語。

***

女性監督が撮ったという。映像が美しかった。若い女性というのはそれだけで美しい。それが画面からあふれてくる。体のパーツだけではなく、その所作すら美しい。女性に生まれてよかったと思った。

女という性が描かれているように思えた。第二夫人の娘が初潮を迎えた時、メイの妊娠、出産、掟を破った恋人たちの男性の方は罰を受けながらもそのままそこで生活するが、女性の方はお腹の子供と共に寺へ行かされる。残る方が楽か寺に行く方が楽なのかはわからないけど、その年ごろの女性にとって、愛する男性を見つけて、その子を産みたいと願うのは女性としては自然なことだろう。

そして、ハ第一夫人の息子の嫁として迎えられた少女。彼女は最初から拒否される。破談にしたいという話が両家でもたれるが、実家に帰る事も許されず婚家に居場所も作れず、悲しい事になってしまう。

メイは14歳で見知らぬ男の妻になっただけで、男と女の事など知りもしないメイは、あれは好きではないといい、第二夫人のスアンに、旦那様を喜ばせる為に、気持ちのいい振りをしていれば、それがいつか本当になると言われる。

男の子を産まないと奥様とは思われないと聞いて、メイは男の子を望むようになる。自分の居場所を作るには当然の願いだろう。だが、こういう事は望んだからと言って叶えられない。第二夫人の子供は女の子ばかり。第一夫人の息子はちょっと頼りない。彼女が男の子を願うのは、あの中で生きていく為には自然な願いだろう。

女同士のいたわり、先輩からの教え、それぞれの願い、口にはしない事、そういうことがメイの目を通してわかる。

ハ第一夫人の息子に嫁に来た少女が悲しい事になるのと、メイが出産の最中に生死の境目をさまようように思える映像もよかった。あの世と現世の間にあるものが美しく少し恐ろしく切なかった。

私には懐かしく思える風景があった。個人的にはそれもよかった。

昔の日本にもこういう風景は合ったんだろう。女性の自由がなく好きな仕事や好きな相手と結婚できない。だがその制限された中で考え相手に寄り添い、自分の居場所を作った女性達は私よりも強く賢かった気がする。今は職業の制限も結婚相手の制限もなく、昔に比べればいい時代に生きてるなと思う反面、考える力や相手に寄り添う力が育つのが、私の場合は遅かった気もする。あんまり深く考えないせいかなw

いつか全ての国の全ての女性が、自分が思うように生きられる時が来るといいな。